店舗・施設をその地域でオープンしようと思ったきっかけは？

私は生まれも育ちも大川市です。高校卒業後すぐ、家業のお茶販売と水引細工の製造販売を継ぎました。そこでは、お茶だけでなくコーヒーも販売するようになりました。
そんな時、近くのスーパーマーケットで同じコーヒーが目玉商品として売られており、その価格がウチの仕入れ価格より安かったことに衝撃を受けました。この様な商売、商品を扱っていたら“いかん”と思った訳です。
ちょうどその頃、狭い店頭でシャカシャカと小さな焙煎機で、オリジナルのコーヒーづくりを行っている自家焙煎の店を知ったんです。「これだ！」と思い、それから多くの自家焙煎店をリサーチしました。そして、オンリーワンのコーヒー作りに挑みはじめました。

自宅の横に焙煎小屋を建て自家焙煎からスタートし、その後『珈琲の味方塾』、現在の『ジャパン ロースターズ ネットワーク(JRN)』に出会い、コーヒーの生豆の買付け、スペシャルティコーヒーについて本格的に学びました。当初は、コーヒー販売とお茶屋の両方を営んでいましたが、この出会いを切っ掛けにコーヒーに特化する決断をしました。コーヒーの学びは知れば知るほど奥が深い、エンドレスです。

そして焙煎はもちろんのこと原料である生豆にもこだわっています。自ら産地に足を運び、現地の環境を見て感じて、生産者のみなさんと触れ合って買付けを行っています。もう20年ほどの付き合いになる生産者さんもおられます。気になる農園があれば、そちらに赴き新たな買付けの開拓をすることもあります。お互いの立場や想いを尊重し、共に成長する関係を大切にしながらフェアトレードを行いたいと思っています。自然環境、経済を含めた持続可能な世界循環にも繋がりますからね。

商品、店舗の特徴を教えてください

「あだち珈琲」は、コーヒー豆や器具を販売する大川店、同じ施設内にある「喫茶室COROICO」、久留米店、警固店、八女店と、福岡県内各地に展開しています。それぞれ店舗の外観・内装、販売商品が異なりますから、それぞれの個性を楽しんでもらえたらと思っています。当時は、インターネットもSNSもありませんでしたから、情報を発信するのが難しい時代でした。その中で大川市外である、久留米への2号店出店は挑戦でしたが、おかげさまで久留米の皆様にもよろこんでいただき根付いています。

大川店と「喫茶室COROICO」のある「ヴィラベルディ」は、南欧をイメージして作られた商業施設です。
大川市と、イタリアのポルデノーネ市は、姉妹都市提携しているんですよ。ポルデノーネ市は欧州屈指の家具産地、大川市と同じ家具職人の街なんです。今でも、青少年の相互派遣や視察訪問を行う、繋がりの深い関係です。「ヴィラベルディ」の床のタイルは、イタリアの職人が手掛けたものです。館内には中央に吹き抜けの中庭と広場があります。そこでシーズンのイベントや、第2・4日曜に地元の音楽家などをお呼びしてコンサートを開いてとてもにぎやかです。開放的な中庭、「喫茶室COROICO」で食事やコーヒーを味わいながら、流れて来る音楽を楽しむ。まるでイタリアの広場にいるような、贅沢でゆったりとした時間を堪能できますからおすすめです！

オープンして良かったと思ったできごと、印象深い思い出は何ですか？

若者の育成や、コーヒー業界を盛り上げる手伝いに携われていることです。
大川市内だけでなく県内外から、ウチに焙煎や、店舗経営などを学びに開業志望の若者が就労してくれています。「勉強になりました、ありがとうございます！」と巣立って行ってくれるのはうれしいです。20代の人生の大事な時期に、コーヒーという1つのステージで頑張ってくれる。一緒に人生の一部を共有できるのは有り難いことですよ。みんなそれぞれ持って生まれたキャラクターを持ち、全く同じ色にはならないんですが、うちで働きながらコーヒーを学ぶ中で自分の色を見つけて、人間力をパワーアップして欲しいと思っています。人を育てることは、自分も一緒に育つことです。コーヒーを通じて、同じ時間を共有しながら、スタッフのみんなと一緒に私もこれからも励んでいきたいと考えています。卒業したスタッフたちが日本各地、海外などでも活躍するのが楽しみです！コーヒーを介して、語らいの場やゆとりの時間などを多くの方に提供できたらすばらしいなと思います。

今後はどのようなことをしたい、どんな風になったら良いな！と考えていますか？

大川市を盛り上げるのが目標の1つです。地元にいると気づかない、観光で来た外部の方だからこそ見えることがあると思います。最近、SNSを通じて来店してくださる方が増えました。イベントの情報や商品の画像の投稿から、興味を持って大川市まで来てくれるんです。大川市にしかない宝を発掘して、多くの方に魅力を伝えられるよう情報発信にも力を入れたいと思います。

まずは、大川店のある「ヴィラベルディ」のイベントを盛り上げ応援するところから始めたいです。開放的なすばらしい景観を活かし、コンサートなどの音楽イベントをより盛んにできたらと考えています。地元の演奏家や吹奏楽部の学生さんが活躍できる場も増やしたいですし、イタリアからもアーティストの方を呼びたいですね。生の音楽を聞きながら、コーヒーや食事を楽しむ文化的な体験を堪能してもらえたらと思っています。「コーヒーと音楽で街を応援する！」がキーワードです。コーヒーを真ん中にして、みなさんが笑顔になってくれたらとてもうれしいです。