NPO法人 小保.榎津藩境の町保存会|三宅 浩子 様

2023.03.10

エリア:大川市

なぜこの市で活動しようと思いましたか?きっかけなども教えてください

 

私は宮崎県生まれですが、小学校から大川市で過ごしました。結婚後一旦は県外にいましたが16年後、家族で大川に戻って来ました。子どもの頃周辺を通っていたのに、「旧吉原家住宅」周辺の歴史ある町並みが大川にあるとは知りませんでした。大人になって改めて、町並みの美しさに惹かれ深く知りたいと思いました。大川市で募集された第1回大川ボランティアガイドの養成講座に参加しました。この町の歴史や活動に興味が更に深くなり、その後「NPO小保・榎津藩境のまち保存会(以下、保存会)」の前身である「藩境のまちづくりを考える会」で活動に参加するようになりました。

保存会は、2019年から大川市の委託を受けて、国指定重要文化財、旧吉原家住宅の業務管理を行っています。私を含め保存会のメンバーと交代で、「旧吉原家住宅」での活動をしています。市内外からお見えになるお客様への案内や、コンサート、歴史講座、各種ワークショップなどの自主事業開催、館内掃除管理業務です。近隣でも珍しい、中世の地割が残る古い町並みのすばらしさを市内外の来訪者に広く伝えたいと、保存会で活動しています。

また、「藩境もんぺ屋 Beta Beta」も個人で経営しています。久留米絣のお好きな柄をチョイスしていただいて、おしゃれなもんぺをセミオーダーで仕立てています。デザインだけでなく、着心地も抜群なので、絣の良さを広めたいと思いオープンしました。

 

 

活動して良かったこと、驚いたことは何ですか?

 

文化・風土の多様性を感じられることですね。この地域は江戸時代、1620年に久留米藩と柳川藩に分かれた境界が残っており、文化や言葉が異なります。境界を越えると、方言、特にお年寄りが話される言葉が違うので、面白い地域です。

私達保存会は、文化財を守るために、建物や町並みを見てもらうだけでなく、知って体験してもらうことを大切にしています。「旧吉原家住宅」は1999年に、国指定重要文化財に指定されましたから、火気を使用しないなどの制約がありますが、その中でどんな体験を提供できるかをみんなで楽しみながら考えています。地元の小学生たちに、夏は洗濯板での洗濯体験を行っています。洗濯板をはじめて見た子たちばかりで、驚きながらも目を輝かせてくれましたよ。中には、鋭い質問をくれる子もいます。みなさんの期待に応えられるよう、私達も日々勉強ですね。お抹茶の立て方体験では、初めて抹茶を飲んで、みんな眉間にシワを寄せてかわいらしくて。大人になって「そういえば地元に古い町並みがあったな。子どもの時抹茶を飲んで苦かったな」とか思い出して、今度は家族や友達とまた遊びに来てくれたらうれしいですね。大人の方には、組子製作体験も出来ます。SNSを見て県外からお越しになる方もおられます。

「旧吉原家住宅」の建造物に触れてもらうことも積極的に行っています。回転雨戸は、回転金具を利用して、雨戸を取り外さずに廊下の曲がり角を90度回転させて往来する特殊な引き戸です。実際に戸袋から引き出して、戸を回転して。初めて見て触る方ばかりで、歓声が上がることもありますね。実際に体験することで感動して興味を持ってもらいたいと考えています。

 

 

移住者、観光者の方におすすめしたいこと、食べ物、場所(名所やお店など)などを教えてください!

 

大川市は家具、建具などの木工産業で有名ですが、この小保・榎津地区が木工発祥の地です。大河、筑後川を利用して、木材が運搬され、職人が集い木工業が盛んになりました。「旧吉原家住宅」周辺の町並みを歩くと、江戸期のまま残る道の形状や、江戸、明治、大正、昭和の建築年代の違う町家が点在してしてます。歴史好きな方は面白いと感じていただける町並みです。ぜひ、ゆっくり歩いて観光してもらいたいです。

榎津には創業300年以上の酢の蔵元、「庄分酢」があります。酢を使用したランチが人気で、市外からのお客様が多いです。そちらも、古い家屋を活用して、さまざまな食品の販売や、レストランを運営されています。おいしいものを食べて、建物のすばらしさもぜひ堪能してください。

 

 

今後はどのようなことをしたい、どんな風になったら良いな!と考えていますか?

 

今後も自主事業を積極的に開催していきたいと思っています。「旧吉原家住宅」では、年に6回の体験型事業の他に、毎年恒例の「小保・榎津藩境まつり」にも参加しています。まつりの期間中は、ひょっとこ踊りや花まつりの稚児行列などを地域のみなさんと協力して周辺地域で行います。県内外から多くの方が集います。毎年、地元の看護学校の学生さんがボランティアとして運営に参加してくれて有り難いです。4月〜5月にかけて、国内外で活躍するアーティストとのアートイベントも行う予定です。歴史ある町並みとのコラボレーションが、どのように展開するか楽しみですね。

この町並みはまだまだ、活用に伸びしろがあると思います。しかし、空き家問題も抱えていますので、古民家が好きな若い方がⅠターンやUターンして古民家活用をして八女福島の町並みのように賑やかになり、活用と保存が一体化できる藩境の町になることを願って活動しています。イベントも、興味を持ってもらうための1つの扉です。観光客の方だけでなく、まずは、地元の若者たちに興味を持っていただきたいです。歴史が脈々と繋がり、先人たちが守ってきたこの地域のすばらしさ、奥深さを知ってもらいたいです。自分の生まれ育った町に愛着を持つことは、子どもたちのアイデンティティを強くしますから。この町並みを100年、200年と保ち、次の世代にバトンタッチし続けるために、私達保存会が今踏ん張らなければいけませんね。この町のすばらしさはまだまだ語り尽くせません!何度でも足をお運びください。町の魅力を伝えるお話をたっぷりご用意してみなさんのご来館をお待ちしています。

PAGE TOP